テノヒラ

僕は差し伸べたその手は冷たく
君が掴まえた掌は比べ物にならないほど暖かい

どうしてどうして?
僕に触れる手も、僕が触れる手も何もかわらない
君が取った温度はどこかで変わって
在り処が薄ぼんやりと霞んでいる

この影を照らす君はいつでも僕の手を握り
痛いほど爪を立て
非力な手は力を込めて
どうしてそんなにも引き止めるの

温かなその心にずっと触れていることなんか
、出来るわけ無いのに

僕の発露を君は悟って 賢いね、賢いよ
一歩退いた僕の手を君はまだ名残惜しそうに眺めて
ぬくもりは何れ消えていく

どこに消えたんだろう
どこに消えていくの?
季節に流離う 宛ら渡り鳥のように
月夜朧架かる 白い気重ね合わせ

冷たい手はまた握られ
暖かい手にまた囚われた
どれほど逃げても どれほど恐れても
楔で結ばれた僕に逃げ場所なんて無いことを教えられる

君はいつも僕を縛り
そして君は縛ることで所有することを鑑みていた
まるで
まるでそう
捕らえておかないと逃げられてしまう、渡り鳥のように籠に閉じ込めておこう

僕の手が君の手を剥がし心を歪めて軋んだ音をおとなしく聞く
暖かい手が僕を拒絶してやっと予感を覚える

温かなその心にふれる
その手の体温を伝えてまだまだ距離を測る
手と手の、掌の温度
どこまでも感じて